平成二十年(二〇〇八年)十二月十三日(土)
(第二千六百三十五回)
◯米国オレゴン州シェリダン刑務所からカリフォルニア州ロンポクの
連邦刑務所に移送された、フリッツ・スプリングマイヤーさんから
十二月六日、筆者(太田)あてに、十一月二十八日発送の手紙が届いた。
◯この手紙の中には、週刊日本新聞あての、二通目の寄稿
「中國の拡大はどこに向うのか。」が同封されており、
その日本語訳が出来上がったので、それを掲載する。
【スプリングマイヤーさんから小誌への寄稿文 二〇〇八年十一月二十八日】
中國の拡大はどこに向うのか。
フリッツ・スプリングマイヤー
生活の中で精神の教訓(スピリチュアル・レッスン)を追求してみよう。私たちは「なか=いま」における自らの精神(スピリチュアル)生活を送りたいと考えている。図表や地図上の一点がどこにあるのかを知るためには、その位置を定める座標軸が必要になるのと同じく、私たちは自分たちがどこにいるのかを知るためには、我々がどこからやって来たのかを知る必要がある。それ故、私たちは現在の中で生活していながらも、現在をより良く知るために過去と未来に目を向けるのだ。
私は「まごころ」——キリスト教徒が真実の魂(the Spirit of Truth)と呼ぶもの——が極めて大切なものだと考えている。様々な境遇の中から我々の「まごころ」が、その真価を発揮する機会が訪れるのだ。
「まことの心」から出現するのは勇氣と叡智であり、弱々しい恐怖心ではない。
それでは、こうした高潔な叡智の心によって導かれる精神的姿勢を保持しつつ、私たちの現在を読み取る作業を進めようではないか。
一九四二年、ヨーロッパはドイツの軍事力によって、アジアは日本の軍事力によって連帯した。けれども軍事力はこの連帯に関して極めて貧弱な仕事しかできず、一九四五年までに、こうした試みは失敗に終わった。
現在、ヨーロッパとアジアは一九四二年当時よりも、連帯をより強化している。それは軍事力によってでなく——協力によっての連帯を。ドイツと日本は今、重要な指導力を発揮している。
一九七九年、ドイツは五百二十億米ドルの金及び外貨準備額をもって世界第一位であった。第二位は三百三十一億米ドルの日本であった。この第二次世界大戦後の経済(復興)の奇跡はドイツと日本によって平和裏になしとげられた。
一九七二年九月二十五日、(当時の)田中首相は中華人民共和國が中國全土の正当なる政権であることを正式に認めた。それに続いて日本と中國本土間の旅客機の定期運航、長期にわたる通商協定、さらには中國から日本への原油輸出が実現した。
今や日本が中國との國交正常化を実現してから三十年以上の歳月が流れている。
中國における最近の政治的、軍事的展開は中國が攻撃的な拡大(aggressive expansion)の道をたどらんとしていることを示している。中國指導層は北アメリカへの伸張を含む拡大(の方向)を決定している。中國が積極的に戦争遂行能力をますます増大させていることに着目し、その意味を理解していく必要がある。だが、歴史の教訓は我々に平和的協力関係によってこそ、より多くのものを手にし得ることを教えている。アメリカが中國を扇動するという図式は継続するであろう。アメリカに投資した中國は、いつ自らの自制心を失うのだろうか。世界の指導者たちは、いかなる進路を選択するのだろうか。(了)
(週刊日本新聞編集部譯 平成二十年十二月十二日)
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