平成二十年(二〇〇八年)十月二十五日(土)
(第二千五百八十六回)
◯全世界は、動乱の時代に入った。
◯日本はどうか。
◯日本は、没主体的にこの動乱に巻き込まれ、動乱に引きずり込まれつつある。
◯従って、日本人の絶対多数の現在の心理、現在の心境、現在の立場は、
◯いかにすれば、この外から来る動乱に巻き込まれないですむか。
◯と言うことである。
◯しかし、これは、「絶対多数」であって、日本人の全員、ではないだろう。
◯日本人の少数部分は、やや異なる心理にある。
◯敗戦後六十三年。
◯この六十年余の間で、日本の若者が革命とか、革命らしいものとか、
そうした志向を以て行動した時期は三つある。
いずれも、非常な短期間である。
◯第一期は、敗戦直後、昭和二十年十月から、二十二年二月までの一年数か月。
◯第二期は、昭和三十五年六月までの一年足らず、いわゆる六十年安保闘争である。
◯第三期は、一九六六年から一九六九年までの約三年。
いはゆる全共闘運動の時代である。
◯しかし、この三つの時代の中で、第三期が、最も重要である。
◯この第三期、当時の日本の若者たちに、深い影響を与えた作家は、
白土三平「カムイ伝」と、赤塚不二夫、であろう。
◯白土三平が、長編「カムイ伝」を描き始めたのは、一九六〇年代、
そしてまさしくそれは、一九六六年~六九年の全共闘運動と共振した。
◯十月二十五日付讀賣新聞夕刊によれば、
小学館は、三年前から「決定版 カムイ伝全集」を刊行、第一部、第二部、外伝
の計三十八巻は、合計五十四万部強が売れた。
◯そしてそれは今、日本の若者、学生の一部にも読まれていると。
◯この「カムイ伝」を描き始めた頃の白土三平は、三十代前半であったろう。
◯今、七十六才の白土三平は、「カムイ伝 第三部」を書こうとしている、と言う。
◯この事象は、現在日本人のごく一部が、
◯全世界の動乱と激動とに、少々、波調が会うようになる兆しのようなものかも知れない。
◯しかし、こんな程度の作品では、日本人の心をこれから、始まる世界大動乱のヒビキ
に同調する精神的準備とは成らないであろう。
(了)
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