平成二十年(二〇〇八年)八月二十三日(土)
(第二千五百二十三回)
◯ワンカール(ラミロ)著、吉田秀穂訳「インカの抵抗五百年史」の
「第一部 昨日」。
「第一章 宇宙的共同体」
◯この叙述を、
◯トマス・モア著、平井正穂訳「ユートピア」
(岩波文庫 一九五七年十月第一刷、二〇〇三年九月第六十九刷)
◯及び、
カンパネッラ著、近藤恒一訳「太陽の都」
(岩波文庫 一九九二年四月第一刷。一九九九年七月第三刷)
◯この二冊の古典と、比較することが必要である。
◯モア(一四七八年~一五三五年)の「ユートピア」は、ラテン語で書かれ、
一五一六年にルーヴァンで出版され、ヨーロッパ大陸で流通した。
◯英国でラテン原文版が流通するのは、はるか後のことである(岩波文庫版、
はしがき)と言うが、それは、モアの生存中のことが、死後なのかは分から
ない。
◯一五五一年にロビソンの英訳本が出た、とある。
◯カンパネッラ(一五六八年~一六三九年)は、
一五九二年(二十四歳)のとき、最初のカトリック教会の権力による弾圧を
受けてから、一六三九年、七十一歳で死去するまで、一生涯を、カトリック
教会の監視と弾圧、投獄の中で過ごした。
◯「獄窓の哲人」の名にふさわしい。
◯そのカンパネッラが一六〇二年に、イタリア語で書いた本が
「太陽の都」である。
◯しかし、イタリアでは、イタリア語版の「太陽の都」を出版することが出来ず、
ラテン語訳本が一六二三年、ドイツ、フランクフルトで出版されたと言う。
◯この二冊の古典の岩波文庫版邦訳著の解説を読むと、
◯そこには、ワンカール(ラミロ)が述べているような、タワンティンスーユ、
アンデスの共同体との関係は、殆んど全く、言及されていない。
◯モアの「ユートピア」の解説には、ほんの三行ほど、漠然とした表現の記述がある。
◯しかし、カンパネッラの「太陽の都」訳著解説には、なんにもない。
◯これは何を意味するのか?
◯我々は、これから、この問題を検証して行く必要があるだろう。
◯但し、ワンカール(ラミロ)は、トマス・モアについて、
「イギリスの貴族でありながら、(この本[ユートピア]を書いたために)諸国
を逃げまわり、匿名を使って本名を隠した。最後には、逮捕され処刑された」
と書いて居るが、
◯通常の公式のトマス・モアの伝記では、それは違う。
◯トマス・モアは、
英国の「大法官」の位にありながら、ヘンリー八世の意思、根本政策を合法化す
ることを拒否したために、ロンドン塔に幽閉されたのちヘンリー八世の命令に
よって死刑にされた、と言う。
◯この公式説を取るとすれば、、ワンカール(ラミロ)の記述は誤まりである。
◯アンデスのタワンティンスーユの人々の間では、
◯このような説が、一部に行なわれているのかも知れない。
(了)
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