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ワンカール(ラミロ)曰く。

トーマス・モア(ユートピア)、
カンパネラ(太陽の国)、これらは、

タワンティンスーユについての正確な描写である。
そしてそれを著作として、公刊したが故に、サー・トーマス・モアは死刑。
カンパネラは二十七年間、投獄された、と。

公開日時:2008年08月23日 00時56分
更新日時:2009年02月10日 23時15分

平成二十年(二〇〇八年)八月二十二日(金)
(第二千五百二十二回)

◯ワンカール(ラミロ)は、次のように書いて居る。

サー・トーマス・モアはアメリコ・ベスプッチやペドロ・マルティネス・
ダンジェラのような航海者の記録を読んだ。そして『ユートピア』を
書いた。彼の国イギリスでは、この本は発禁となり、ラテン語版の出
版から三十五年たった一五五一年になってやっと英語で出版すること
ができた。

『ユートピア』の住民はアモロナウタスと呼ばれているが、これは
アマウタスから取ったもので、農業共同体の中で金も戦争もなく暮し
ていた。彼は、当時許された最高の正確さで、インカの生活を描いた
のである。これにより彼はヨーロッパの暴力とエゴイズムに抗議した
のであった。

イギリスの貴族でありながら、諸国を逃げまわり、匿名を使って本名
を隠した。最後には、逮捕され処刑された。
(『インカの抵抗五百年史』、三百二十六頁)

◯  十六世紀末の『太陽の国』では、住民は、タワンティンスーユと同じ
ように個人的所有を持たず、権力的血筋では継承されず知恵ある者が
選ばれ、警察は存在しなかった。著者のトマス・カンパネラはその著作
とナポリを解放しようとしたかどによりスペイン国家により二七年間
投獄された。

◯  異端審問にもかかわらず、これらユートピアンの時代には、ヨーロッパ
はインディアスの諸共同体について今日よりも多くを知っていた。
(前出、三百二十六、七頁)

◯日本でも、大正期、昭和初期、ワンカール(ラミロ)がここで取り上げている、
トーマス・モア、カンパネラのような人々の「ユートピア文学」を翻訳した。 

◯しかし、その当時も現在も、日本人は、それらをまともに読んだとは思えない。

◯それらの「ユートピア文学」と殆んど同時に、いや、ひょっとするとそれに
先行して、

エンゲルスの「空想から科学への社会主義の発展」、の方が有名に成ったので
はなかろうか。

◯空想的「ユートピア的社会主義」など、古い古い!!
と言うわけである。

◯十六世紀ヨーロッパの良心的誠実な知識人にとって、それは「空想」でもなく、
幻想でもなかった。

◯それは南米アンデスに実在する共同体であった。

◯「ヨーロッパは数万年前に、侵略的となった」(前出、三百二十二頁)

◯「狂乱的な狩猟で彼らが野蛮とよぶ動物を絶滅した」(同上)
........................
........................

◯西洋、西洋人については、我々は既に、多くの先人の正確な説を知って居る。
ここに三人だけ、挙げて置く。

(1)胡蘭成(コランセイ)
(2)シオラン(西洋人を人類一般と取り違える)
(3)ヴィリリオ( 同じ )

◯ここで我々は、ワンカール(ラミロ)の、

「(スペイン人に対する、ケスワイマラ人の)防衛戦争のバランス・シート」
(前出、二百七十三頁~二百七十六頁)

を、必ず、熟読しなければならない。

(了)

 




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