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プロレタリアート(つまり奴隷)は、永久に反逆も革命も起せない。
と、オーウェル(一九八四年)のビッグブラザーの一味は断言する。
このテーゼは正しいか。

公開日時:2008年08月16日 23時27分
更新日時:2009年02月10日 20時59分

平成二十年(二〇〇八年)八月十六日(土)
(第二千五百十六回)

◯鈴木啓功著「十年後の世界」。

◯ここで、
ジョージ・オーウェルの「一九八四年」がかなり本格的に論評されて居る。

◯これは、日本では、珍しいことである。

◯日本では、「一九八四年」も、オルダス・ハクスレイの「すばらしき新世界」も、
未だかつて、体制内的インテリによって、まともに論じられたことはない。

◯彼等は、この二冊を、SF的娯楽読みもの風の「作り話」と見なして居る。

◯しかし、オルダス・ハクスレイは、ジョン・コールマン博士によれば、
れっきとした秘密の世界権力「三百人委員会」の正式会員である。

◯ジョージ・オーウェルの正体も、英国MI6の工作員である。

◯ 「プロレタリアートは絶対に反逆的企てたりやしない、
一千年たっても百万年たっても、彼らにそんな真似は出来っこない」

と言う文章を前出鈴木啓功著は引用する(百三十四頁)。

◯ここには、西洋史「六千年」(と取りあえず言って置く)の根本問題が存在する。

◯「プロレタリアート」とは、古代ローマのことばである。

◯プロレタリアートは、「奴隷」のひとつの歴史的形態である。

◯奴隷は、支配体制に反逆してそれを引っくり返すこと、
つまり革命を起こすことは出来ないと。

◯このテーゼは正しいか。

◯正しいかどうか、と言う前に、そのテーゼは、歴史的に実証されているか?

◯つまり、奴隷が革命を起こし、その革命を成功させた歴史的実例は存在したか?
と言うことがまず、問題である。

◯世界史には、失敗した奴隷の反乱、敗北した奴隷の革命の実例は多い。

◯小さな奴隷の反乱まで数えると無数に存在するであろう。

◯胡蘭成先生は、西洋は、古代から奴隷制度によって汚された、そしてその結果
西洋の文明は滅亡した、と言はれる。

◯文明と、奴隷制度と、
この両者は、決して両立しない、と。

◯奴隷の存在と、その奴隷が制度として、民族、国家の中に確立することと、
この二つは、全く別であると。

◯奴隷が「奴隷制度」として、社会の中に根を張ってしまうと、
これは救いようがないひどいことに成る。

◯西洋は、そのような救いようのない存在ですると。

◯きわめてまれに、このことに、気付く、西洋人が出現する。

◯近代西洋では、

◯シオランである。

◯更に、シモーヌ・ヴェイユも。

◯シモーヌ・ヴェイユは、
西洋は奴隷制度が確立した社会であり、そして、一たん人間が奴隷化すると、
根こぎにされてしまう。

奴隷とは、根こぎにされた人間である。
根こぎにされた人間は、即ち、奴隷は、根こぎにされて居ない人間を見ると、
その存在を許して置けない。

彼らは、根こぎと言う病気をそこら中に伝染しないで居られない。
と言った風に述べた。

◯従って、奴隷が革命を起こすとか、奴隷が奴隷制に反逆して、
それをひっくり返すなどは、あり得ない、それは妄想である、と。

◯シモーヌ・ヴェイユは、唯一の救いの道は、イエス・キリストである。
などと言う。
これも妄言であり、妄想である。

◯この問題についての解決の糸口は、幾つか存在する。

◯その一つは、
ワンカール(ラミロ・レイナガ)著、吉田秀穂訳
「インカの抵抗五百年史-タワンティンスーユの闘い」
(新泉社、一九九三年刊、絶版)の中にある。

◯この本のスペイン語原著は、
「タワンティンスーユ-ケスワイマラ人のスペインに対する五百年の戦争」
(一九七九年、一九八一年 ボリビア版、メキシコ版、ペルー版、スペイン版)、
であるが、

◯二〇〇五年十二月に、増補版(ボリビア版)が出て居る。

(了)

 




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